AIを仕事に使いはじめると、遅かれ早かれ必ず突き当たる問いがあります。「この情報は、AIに入れてしまっていいのだろうか」という問いです。
お客様の名前が入った問い合わせメール、社員の評価に関するメモ、取引先からお預かりした資料。便利に使えそうな場面ほど、扱う情報は具体的で、そして慎重さが求められるものになっていきます。
「便利さ」より先に、立ち止まる問い
AI活用の相談をいただくとき、私たちが早い段階でお話しするのが、この見極めです。何ができるかを考える前に、「そもそもこの情報をAIで処理してよいのか」を見る目を持っておくこと。この順番が逆になると、後から取り返しのつかない形になりかねません。
見極めのものさしは、難しいものである必要はありません。たとえば、次のような問いです。
- この情報は、誰から、どういう約束でお預かりしたものか
- その約束の中に、外部のサービスで処理することが含まれているか
- 万が一この情報が外に出たとき、いちばん困るのは誰か
三つめの問いが、いちばん大事だと考えています。困るのは自社ではなく、情報の向こう側にいる人だからです。目の前の効率ではなく、その人の立場から考える。この視点があるかどうかで、判断はずいぶん変わります。
私たちが医療・福祉の現場でご一緒してきた経験から学んだのも、まさにこの目でした。扱う情報の重みが大きい現場だからこそ、「使えるかどうか」の前に「扱ってよいかどうか」を見る習慣が自然と身につきます。
判断を、担当者の勘に任せない
ただ、この見極めを一人ひとりの感覚に委ねてしまうと、長くは続きません。人は忙しくなると近道を選びますし、判断の基準も人によってばらつきます。
大切なのは、判断を仕組みに落としておくことです。扱ってよい情報の範囲をあらかじめ決めておく。個人情報を含むものは、そもそも社外のサービスに送られない経路にしておく。迷ったときに誰に聞けばよいかを決めておく。
こうした仕組みがあると、現場の人は安心してAIを使えるようになります。逆説的ですが、扱ってよい範囲をはっきりさせることは、AIの利用にブレーキをかけるためではなく、堂々と使えるようにするためのものです。禁止事項を増やすのではなく、「ここまでは安心して使っていい」という土俵をつくる。そう考えていただくのがよいと思います。
「知識がないから進められない」ではありません
ここまでお読みになって、「うちには詳しい人がいないから無理だ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、私たちが実感しているのは、その判断や仕組みづくりに必要な知識さえも、いまはAIが補い、支えてくれるということです。どんな観点で確認すればよいのか、どこに注意すべきなのか。専門家が頭の中に持っていた知識を、対話しながら引き出せる時代になりました。
もちろん、AIの答えをそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。最後に「うちの場合はこうしよう」と決めるのは、事業と、そこにいる人たちを知っている経営者やご担当者の仕事です。AIは、その判断に必要な材料と視点を、驚くほど手早く揃えてくれる相棒だと考えてください。
知識がないことは、もう立ち止まる理由にはなりません。必要なのは、「この情報の向こうには人がいる」と考え続ける姿勢のほうです。
最後に
AIは、扱い方さえ間違えなければ、人の仕事を大きく助けてくれます。そしてその「扱い方」を決めるのは、結局のところ、誰を想って仕事をしているかという一点に行き着きます。
人を想う心が、AIを価値に変える。私たちiTELASは、この考えを大切に、お客様それぞれの現場に合った進め方を一緒に考えてまいります。AIの活用で迷われていることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。