「AIを入れてみたけれど、思ったほど役に立たない」。そんな声の背景をたどると、AIの性能ではなく、社内の情報の置き方に行き着くことが少なくありません。同じ取引先の情報が担当者ごとの表に分かれていたり、最新のファイルがどれか分からなかったり。人でも迷う状態では、AIも力を発揮しにくいのです。
今回は、AIを活かす前に見直したい「データの置き方」について、難しい言葉を使わずに整理します。
AIは、置かれた情報の範囲でしか考えられません
AIは、渡された情報や読める場所にある情報をもとに答えを組み立てます。元の情報が古かったり、ばらばらだったりすると、答えもそれに引きずられます。
たとえば「この取引先との最近のやり取りをまとめて」と頼んだとき、記録がメール、手書きのメモ、個人のパソコンの表に散らばっていれば、AIが拾えるのはその一部だけです。抜けがあっても、AIの答えは整った文章で返ってくるため、足りないことに気づきにくいという難しさもあります。
AIの答えの質は、AIそのものだけでなく、その手前にある情報の整い方に大きく左右されます。
完璧を目指さず、まず「正本」を決める
とはいえ、社内のデータを一度にすべて整理しようとすると、それだけで何か月もかかってしまいます。おすすめしたいのは、よく使う情報から順に「正本(いちばん正しいものはどれか)」を決めることです。
- 取引先の連絡先は、この表を正とする
- 価格表は、このフォルダの最新版だけを使う
- 古い版は消さずに「旧」のフォルダへ移す
こうした小さな約束があるだけで、人もAIも迷いにくくなります。ファイル名に日付を入れる、置き場所を一つに決めるといった地道な工夫も、立派な準備です。
あわせて考えておきたいのが、「その情報をAIで扱ってよいか」という判断です。個人に関わる情報や取引先から預かった情報は、置き場所を分けたり、AIが読める範囲を限ったりする必要があります。整理を進めることは、何をどこまでAIに渡すかを見極める機会にもなります。判断に必要な知識が足りないと感じるときも、AIに「この種類の情報を扱うときに気をつける点は何か」とたずねながら、仕組みを考えていくことができます。
整える作業そのものを、AIに手伝ってもらう
データの整理は、実はAIが得意な仕事のひとつでもあります。表の表記ゆれ(「株式会社」と「(株)」が混ざっているなど)を見つける、重複している行を洗い出す、フォルダの中身を一覧にして分類案を出す。こうした作業は、AIに下ごしらえを任せると負担がぐっと軽くなります。
ただし、どれを正とするか、何を残して何を整理するかを決めるのは人です。その情報が仕事のなかでどう使われ、誰が困るのかを知っているのは、現場で働く人だからです。AIに案を出してもらい、人が確かめて決める。この役割分担を守ると、整理は早く、しかも安心して進められます。
整ったデータは、人のための準備でもあります
データの置き方を見直すと、AIが使いやすくなるだけでなく、新しく入った人が迷わなくなり、担当者が休んだときにも仕事が止まりにくくなります。データを整えることは、AIのための準備であると同時に、一緒に働く人への思いやりでもあるのです。
iTELASは「人を想う心が、AIを価値に変える。」という考えのもと、AIを入れる前の土台づくりから、現場の方と一緒に考えるお手伝いをしています。まずは、いちばんよく探している情報の置き場所を一つ決めるところから始めてみてはいかがでしょうか。