iTELAS COLUMN

紙やFAXが残る現場で、デジタル化はどこから始めればよいのか

紙やFAXを一気に無くす必要はありません。「二度打ち」が起きている場所を一つ見つけ、そこから小さく変える進め方を紹介します。

2026年10月7日

「うちはまだ紙とFAXが中心なので、AIなんて先の話です」。そうおっしゃる経営者の方は少なくありません。注文はFAXで届き、電話で確認し、手書きの台帳に書き写す。長く続いてきたやり方には理由があり、取引先や利用者の方との関係の中で選ばれてきたものです。

今回は、紙やFAXが残る現場で、無理なくデジタル化を始めるための考え方を整理します。

紙を無くすことが目的ではありません

デジタル化というと、「紙をすべて無くす」「全員がパソコンやタブレットを使う」といった大がかりな姿を思い浮かべがちです。しかし、紙やFAXには良さもあります。停電でも読める、相手に合わせられる、年配の方にも扱いやすい。こうした良さを捨てて、形だけ新しくしても、現場は困るだけです。

目的は紙を減らすことではなく、人が同じ情報を何度も扱う手間を減らし、間違いが起きにくい流れにすることです。そう考えると、見るべき場所は変わってきます。

「二度打ち」が起きている場所を探す

最初に探していただきたいのは、同じ情報を二回以上、人の手で書き写している場所です。

  • FAXで届いた注文を、受注の表に打ち直している
  • 電話で聞いた内容を手書きのメモにし、あとでパソコンに入力している
  • 紙の日報を集めて、月末に誰かが集計表にまとめている

こうした「二度打ち」は、時間がかかるだけでなく、写し間違いの原因になります。しかも、たいてい特定の誰かが引き受けていて、その人が休むと止まってしまいます。

デジタル化の始め方として、紙そのものを変える必要はありません。FAXは今まで通り受け取り、届いた紙を写真や画像として取り込み、そこに書かれた内容をAIに読み取ってもらって表に入れる。一見すると地味ですが、人の手で書き写す工程が一つ減るだけで、現場の負担と間違いは目に見えて変わります。

読み取った結果を、人が確かめる仕組みにする

ここで大切なのは、AIが読み取った内容をそのまま信じないことです。手書きの文字や、かすれたFAXは、AIでも読み違えることがあります。数量や金額、日付といった大事な項目は、人が元の紙と見比べて確定する。この「確かめる」工程を最初から流れの中に組み込んでおくと、安心して使い続けられます。

あわせて考えておきたいのが、「その紙に書かれた情報を、AIで処理してよいのか」という判断です。利用者の方の個人情報や、取引先から預かった情報が含まれる書類は、扱える範囲や保管の仕方を先に決めておく必要があります。わたしたちが医療・福祉の現場で培ってきたのは、まさにこの「そもそもこの情報はAIで処理してよいのか」を見る目と、情報を厳重に守るための仕組みづくりです。そして、その判断に必要な知識が足りないと感じるときも、AIにたずねながら補っていける、という経験でもあります。

相手のやり方は変えずに、自分たちの中だけ変える

もう一つ、お伝えしたい考え方があります。取引先や利用者の方に「これからはメールで送ってください」とお願いするのは、相手の負担を増やすことになります。関係が長いほど、言い出しにくいものでもあります。

そこで、まずは相手との接点は今まで通りにして、自分たちの社内の流れだけを変える。FAXは受け取る、電話は出る。その先の社内の処理を軽くする。これなら相手に気を遣わせず、自分たちのペースで進められます。社内の流れが整ってから、希望される相手にだけ新しい方法を案内すればよいのです。

紙やFAXが残っていることは、遅れではありません。それは、相手に合わせてきた証でもあります。その良さを残しながら、社内の「二度打ち」を一つずつ減らしていく。小さな一歩でも、担当者の方の夜が少し早く終わり、間違いの心配が減れば、それは立派なデジタル化です。

iTELASは「人を想う心が、AIを価値に変える。」という考えのもと、紙やFAXが残る現場でも、今のやり方を大切にしながら進められる形を、現場の方と一緒に考えるお手伝いをしています。まずは、社内で誰かが毎日書き写しているものを一つ、思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

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