「新しい事業を始めるべきか」「人を一人増やすか、今の体制で乗り切るか」。経営者の方は、日々こうした判断を抱えています。けれど、迷っている途中の考えを、気軽に話せる相手は意外と少ないものです。社員には不安を与えたくない、家族には仕事の細かい話はしにくい、専門家に相談するほど考えがまとまっていない。そんなとき、AIを「考えを整理する相手」として使う方法があります。
今回は、AIを経営判断の壁打ち相手にするときのコツと、気をつけたいことを整理します。
AIに求めるのは「答え」ではなく「問い」
AIに「この事業はやるべきですか」と聞くと、もっともらしい答えが返ってきます。ただ、AIはあなたの会社の事情や、社員の顔、地域でのお付き合いまでは知りません。一般論としては正しくても、あなたの会社にとって正しいとは限らないのです。
壁打ちでAIに頼みたいのは、答えを出してもらうことではなく、考えの抜けを指摘してもらうことです。たとえば、次のように頼んでみてください。
- 「今こう考えています。見落としている点があれば質問してください」
- 「この案に反対する立場から、気になる点を三つ挙げてください」
- 「判断するために、事前に調べておくべきことを整理してください」
こう頼むと、AIは聞き手になり、こちらが考えていなかった角度から問いを投げてくれます。問いに答えようとするうちに、自分が本当は何を大切にしたいのかが、少しずつ言葉になっていきます。
頭の中を「書き出す」こと自体に意味がある
壁打ちの効果は、AIの返事だけにあるわけではありません。AIに説明しようとして文章を書く、その作業そのものが、考えを整理する時間になります。
頭の中では分かっているつもりでも、書き出してみると「理由がひとつしかない」「数字の根拠があいまい」と気づくことがあります。人に話すときのように、順を追って説明する必要があるからです。
まとまっていない考えのまま話しかけて構いません。「うまく言えないのですが」と前置きして、思いつくままに書いても、AIは要点を整理して返してくれます。それを読み返して「そう、言いたかったのはこれだ」と確かめる。この往復を数回繰り返すだけでも、頭がずいぶん軽くなります。
入れてよい情報を、先に決めておく
経営の相談には、売上の数字や取引先の名前、社員の個人的な事情など、慎重に扱うべき情報が含まれがちです。壁打ちを始める前に、「そもそもこの情報はAIで扱ってよいのか」を考える習慣を持っておくことが大切です。
実名や具体的な金額を入れなくても、多くの相談は成り立ちます。「取引先A社」「売上の約三割を占める主要顧客」のように置き換えるだけで、考えを整理するには十分です。社内で使うAIの設定や、情報の扱いのルールを決めておくと、経営者ご自身も安心して使えます。どこまで入れてよいか迷うときは、その判断のための知識をAIに尋ねてみるのもひとつの方法です。
最後に決めるのは、経営者ご自身です
AIとの壁打ちで考えが整理されても、決断するのは人です。その判断には、数字だけでは表せない、社員への想い、お客様との信頼、これまで積み重ねてきたものが込められています。AIは、その想いを言葉にする手伝いはできても、代わりに背負うことはできません。
だからこそ、壁打ちで整理した考えは、最後に信頼できる人と話す材料にしていただきたいと思います。考えがまとまった状態で社員や専門家と話せば、相談の中身はずっと深くなります。AIは人との対話を置き換えるものではなく、人との対話をより実りあるものにするための準備役です。
iTELASは「人を想う心が、AIを価値に変える。」という考えのもと、AIを判断の代わりではなく、人が考え、決めるための支えとして使うお手伝いをしています。まずは、今抱えている迷いをひとつ、AIに「質問してください」と頼んでみてはいかがでしょうか。