お客様へのメール、提案書、ホームページのお知らせ。文章をAIに下書きしてもらう場面は、ここ数年でずいぶん身近になりました。数行の指示で、整った文章がすぐに出てきます。一方で、「きれいに書けているのに、どこか自分たちの言葉ではない」と感じたことはないでしょうか。
丁寧で、誤字もなく、筋も通っている。それでも読み手の心に届かない文章があります。今回は、AIに文章づくりを手伝ってもらいながら、自社らしさを手放さないための考え方を整理します。
「整った文章」と「伝わる文章」は別物です
AIが書く文章は、多くの人に当てはまる、無難で平均的な表現に寄りやすい傾向があります。それ自体は悪いことではありません。ただ、お客様が受け取りたいのは「どこの会社が書いても同じ文章」ではなく、「この会社が、自分に向けて書いてくれた文章」です。
たとえば、長くお付き合いのあるお客様への連絡なら、前回のやり取りを踏まえたひと言や、相手の状況を気づかう一文があるかどうかで、受け取る印象は大きく変わります。こうした部分は、相手との関係を知っている人にしか書けません。AIに任せるのは文章の「形」を整えるところまで、相手を想う「中身」は人が持つ、という分け方が出発点になります。
自社の「言葉の癖」を先に言葉にしておく
自社らしさを残すためにまず役立つのは、自分たちがふだん大切にしている言葉づかいを書き出しておくことです。難しく考える必要はありません。次のような点を、数行のメモにまとめるだけでも十分です。
- お客様をどうお呼びしているか、どんな敬語の温度感で話しているか
- よく使う言い回しと、あえて使わない言い回し
- 専門用語をどこまで使うか、どう言い換えているか
- 文章の締めくくりに、いつも添えているひと言
このメモをAIへの依頼に添えるだけで、出てくる下書きはぐっと自社の雰囲気に近づきます。また、書き出す過程そのものが、「私たちはお客様にどう向き合いたいのか」を社内で確かめ合う機会にもなります。言葉の癖は、会社の姿勢が表に出たものだからです。
最後のひと手間は、人が受け持つ
AIの下書きが仕上がったら、送る前に人が読み直します。このとき確かめたいのは、誤字や事実関係だけではありません。
- この文章を、相手の顔を思い浮かべながら読んで違和感がないか
- 自分が直接話すとしたら、同じことをこの言い方で伝えるか
- 相手が本当に知りたいことに、先に答えているか
引っかかる箇所があれば、そこだけ自分の言葉に書き換えます。全部を書き直す必要はなく、一文、二文を差し替えるだけで文章の温度は変わります。そして、直した点をメモに書き足していけば、次の下書きはもっと自社らしくなっていきます。AIと人とで、少しずつ言葉を育てていくイメージです。
速く書けることより、想いが届くことを
AIのおかげで、文章を書く時間は短くなりました。けれど、文章の価値は書く速さで決まるものではありません。読んだ方が「自分のことを分かってくれている」と感じられるかどうかに、その会社の姿勢が表れます。
iTELASは「人を想う心が、AIを価値に変える。」という考えのもと、AIを人の言葉を置き換えるものではなく、人の想いを形にする手助けとして活かすお手伝いをしています。文章づくりにAIを取り入れたいけれど、自社らしさが薄れないか気になる。そんなときは、まずは「自分たちの言葉の癖」を一緒に整理するところから始めてみませんか。