介護や福祉の現場では、一日の終わりに記録の時間がやってきます。誰がどんな様子だったか、食事や体調はどうだったか、ご家族からどんな連絡があったか。大切な仕事だと分かっていても、手書きのメモを見ながらパソコンに打ち直していると、気づけば勤務時間を過ぎていた、という声もよく聞かれます。
こうした記録の仕事を、AIに手伝ってもらう使い方が少しずつ広がっています。今回は、記録にAIを取り入れるときの考え方と、始める前に確かめておきたいことを整理します。
AIが手伝えるのは「書き起こし」と「整える」ところ
記録の仕事を分けてみると、「見たことや聞いたことを言葉にする」「決まった形に整える」「必要な人に伝わるようにまとめる」という段階があります。
AIが得意なのは、後ろの二つです。たとえば、職員が話した短いメモを、記録の様式に沿った文章に整える。一日の記録から、申し送りに必要な点を短くまとめる。言葉づかいの揺れをそろえる。こうした作業を手伝ってもらうことで、打ち直しや清書にかかっていた手間を減らせる可能性があります。
一方で、「何を見て、どう感じたか」は、その場にいた職員にしか書けません。いつもより表情が硬かった、話しかけたときの返事が少し遅かった。こうした小さな気づきこそが、記録のいちばん大切な中身です。AIは文章を整えることはできても、利用者さんの変化に気づくことはできません。記録の主役は、あくまで人の観察です。
始める前に「この情報をAIで扱ってよいか」を確かめる
介護や福祉の記録には、お名前や体調、ご家族の事情など、とても大切に扱うべき情報が含まれます。だからこそ、AIを使う前に「そもそもこの情報はAIで処理してよいのか」を判断する目が欠かせません。
使うサービスが入力した内容をどう扱うのか、どこに保存されるのか、学習に使われることはないのか。こうした点を確認したうえで、扱ってよい情報の範囲を決めておきます。お名前を記号に置き換えてから入力する、決められた端末とサービスだけを使う、といった約束ごとを職場で共有しておくことも大切です。
あわせて、情報を厳重に守るための仕組みづくりも必要です。誰がどの記録を見られるのか、使い終わった下書きをどう扱うのか。ルールを紙に書いて終わりにせず、日々の流れの中で自然に守れる形にしておくと、現場の負担も小さくなります。
心強いのは、こうした判断や仕組みづくりに必要な知識そのものも、AIが補い支えてくれることです。確認すべき点を洗い出したり、職場向けの分かりやすい説明を下書きしたりするのに、AIは頼りになる相手です。最後に決めるのは人ですが、考える材料をそろえる段階からAIに手伝ってもらえます。
整えた記録は、必ず人の目で確かめる
AIが整えた文章は読みやすくなる一方で、元のメモにない言葉が足されていたり、意味が少し変わっていたりすることがあります。記録はケアの方針やご家族への説明にもつながるものですから、書いた職員が最後に読み返し、自分の見たことと合っているかを確かめる流れを必ず組み込んでおきましょう。
また、最初から全員・全部の記録で始める必要はありません。たとえば申し送りのまとめだけ、と範囲を絞って試し、職員の声を聞きながら少しずつ広げていくほうが、現場になじみやすくなります。
記録の時間を、向き合う時間へ
記録にAIを使う目的は、記録を手早く片づけることそのものではありません。清書や打ち直しの手間が減ったぶん、利用者さんの話にもう少し耳を傾けたり、職員どうしで気づきを共有したりする時間が生まれることに意味があります。
iTELASは「人を想う心が、AIを価値に変える。」という考えのもと、現場で働く方の声を聞くところから、仕組みづくりをお手伝いしています。記録の時間が負担になっている。けれど大切な情報だからこそ慎重に進めたい。そんなときは、まず今の記録の流れを書き出すところから、一緒に考えてみませんか。